日本能率協会マネジメントセンター

通信教育基盤の未来構想を超高速開発とAWSで実現

目的

募集サイト基盤の再構築と基幹システムの刷新

課題
  • 募集サイトのアクセス数が急増するとパフォーマンスが低下し、ユーザビリティ低下による受注機会の損失が起きていた
  • 基幹システムが拡張性や柔軟性に乏しく、運用コストも増加の一途をたどっていた
選定理由
  • クラウド導入実績が豊富なJMASへの信頼
  • 開発コストを抑えるためのクラウドと高速開発ツールの活用
導入の効果
  • アクセスの急増にも安定したサービスを提供
  • ユーザビリティが向上し、顧客企業が増加
  • 拡張性と柔軟性に優れた事業基盤が得られ、業務横断での情報活用が可能
  • スケジュールかつ開発コストを抑えたシステムを実現

本プロジェクトの概要

日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)は、①“顧客企業の自己啓発支援制度を支える募集サイト基盤の再構築”、および②“通信教育事業における基幹システムの刷新“の2つのプロジェクトを展開。JMASに開発を委託し、2つの基盤をAWSに全面移行した。同社はアクセス数の急増にもサービスを安定提供することが可能になり、受注の機会損失をゼロに。また、高速開発などのメリットを活用し、初期開発コストを抑えつつ、未来構想実現のための事業基盤を構築した。


安定した募集サイト基盤を構築することが狙い

株式会社日本能率協会マネジメントセンター
通信教育事業本部 本部長 川村 泰朗 氏

JMAMは、人の成長を後押しする事業を幅広く手掛ける。通信教育や集合研修などを軸とする人材育成支援事業、能率手帳のオリジナルブランド「NOLTY」や「PAGEM」を開発、販売する手帳・カレンダー事業、ビジネス書や資格関連書籍を扱う出版事業の3つがビジネスの柱だ。

人材育成支援事業の中核を担う通信教育事業部では、多くの企業が従業員のスキルアップなどを目的に導入する「自己啓発支援制度」を支える募集サイト(マナビトウェブ※1)を運営する。顧客企業ごとに発行されるID/パスワードで専用の募集サイトを訪れる従業員は、ビジネススキルや語学、技術などの各種通信教育カリキュラムを自由に選択し、受講することが可能だ。

ただ、現行の募集サイト基盤は、アクセス数が急増するとパフォーマンスが著しく低下してしまう問題を抱えていた。実際に、数万人の受講対象者が一斉にアクセスすると、最悪の場合サイトがクローズしてしまうケースもあり、受注機会損失を招いていたという。

通信教育事業本部 本部長 川村 泰朗 氏は、「システムダウンによりサイトが閲覧不能な状態に陥ると、ビジネス機会を逸してしまうだけでなく、お客様の信用も低下してしまいます。こうしたリスクを回避するため、われわれは突発的なアクセス増にも柔軟に対応できる新たな募集サイト基盤を構築することを決めたのです」と話す。

※1:マナビトウェブ (http://www.jmam.co.jp/hrm/tsukyo/)・・・インターネット上で通信教育に関する案内や導入コースを紹介し、募集を行うシステム。ID・パスワードで管理するお客様専用の募集Webサイトとなっており、お客様の会社の方針やメッセージなどを安心して掲載することが可能。また、情報をデータ化することで、申込みの取りまとめが容易になり、さらにアンケートの実施ができるなど、お客様ご担当者様の負担を軽減している。


JMASがAWS上での短期開発を実現

通信教育事業本部は、2014年4月にプロジェクトを立ち上げ、複数のシステムインテグレータによるコンペを実施。この中でプロジェクトの意図を正確に読み取り、AWSの活用を勧めてくれたのがJMASだ。そこで同社は、アクセス数に応じて処理能力を自動で縮小・拡張し、モバイル対応などの要件の変化にも即応できるAWSを導入する方針を固めた。

カスタマーリレーション部 企画推進2部長 斎木 輝之 氏は、「JMASは、AWSの各種サービスを利用してAWSに最適化されたシステムを構築するステップを明確に示してくれました。弊社初のAWS採用に踏み切れたのは、クラウド導入実績の豊富なJMASが社内調整やリスク管理などもリードしてくれることに安心感を覚えたためです。AWS上でのインフラ構築からモバイルアプリ開発までを一気通貫で担えるJMASの開発体制と技術力も評価しました」と話す。

プロジェクトは滞りなく進行。JMAMは、2015年2月に新募集サイト「マナビトウェブ」をリリースした。カリキュラムの告知・受講希望者の募集媒体にマナビトウェブを採用する顧客企業は2017年3月時点で当初の想定を大幅に上回り、従業員が自らの興味や嗜好に合わせて自由にカリキュラムを選択・受講している。今回、募集サイト基盤をAWSに展開したことにより、アクセス数に応じて最適なインフラ構成をとれるようになり、ランニングコストを大幅に低減できたのも成果の1つだ。

カスタマーリレーション部 企画推進2部 五十嵐 弘子 氏は、「マナビトウェブを採用する顧客企業は、リリースから約1年で約200社増加しました。それに伴い、アクセス数も上昇していますがパフォーマンスを落とすことなく、安定的なサービスを提供できています」と語る。

株式会社日本能率協会マネジメントセンター カスタマーリレーション部 企画推進2部長 斎木 輝之 氏(左)
株式会社日本能率協会マネジメントセンター カスタマーリレーション部 企画推進2部 五十嵐 弘子 氏(右)

GeneXusを利用して業務アプリを高速に開発

マナビトウェブをリリース後、JMAMは通信教育における商品管理、受講管理、受注管理、顧客管理、成績管理を中核的に担ってきた基幹システムを刷新するプロジェクトを発足した。15年以上にわたって機能追加やメンテナンスを繰り返してきた現行の基幹システムは、拡張性や柔軟性に乏しく、運用コストも増加の一途をたどっていたためだ。

システムインテグレータの選定では、開発スピードや初期・ランニングコストに加え、理想のシステム像を実現するための提案とそれを裏付ける技術力を評価し、JMASに開発を委託した。重要な要件になったのは、ビジネスの成長を見越したインフラ拡張や機能追加への柔軟な対応、分析基盤の構築、社内外の各種システムとの連携を実現することだ。

通信教育事業本部 事業改革部長 加藤 由理 氏は、「JMASは、AWSの活用を含め、われわれの要件を満たす最適なサービスやパッケージの組み合わせを提案してくれました。ミッションクリティカルな基幹システムをAWSへ全面移行する全社的な決裁が円滑に進んだのは、サービスを停止しない募集サイト基盤をAWS上に構築してくれたJMASなら安心という共通認識が形成されていたためです」と話す。

スケジュール上、基幹システムをゼロからスクラッチで開発する選択肢がない中で活用したのは、プログラムとデータベースを自動生成する統合開発環境のGeneXusだ。要件定義時にはGeneXusにて作成したモックアップをベースに要件を整理し、両社の認識の相違がないよう仕様を固められたのは大きな利点だったという。また、今回のリプレースでは、従来のフルスクラッチの基幹システムとは異なり、業務アプリ、BI、EAIの領域を明確に切り分けた上でそれぞれに最適なパッケージを適用。これにより、ビジネス環境や要件の変化に追随しやすいシステム構成をとることができた。

JMAMは、2016年12月に新基幹システムを稼働させた。初期開発コストを大幅に抑えられたのは大きな成果だ。通信教育事業本部 事業改革部 主幹 成井 隆 氏は、「今回の開発では、オンプレミスの商用DBからAWSのMySQLへの移行を実施しました。ハードウェア調達やライセンス更新を伴ってそのまま商用DBを使い続けていた場合の10分の1程度のコストに圧縮することができました」と語る。

本稼働後、システム障害は一切発生していない。これは、JMASとうまく連携しながら現行システムと新システムの実行結果を比較・検証するテスト工程を網羅し、改修を繰り返しながら品質を高められた結果だ。

このプロジェクトは第1フェーズを終えたばかり。第2フェーズでは、複数の事業部を横断した情報活用がポイントになる。通信教育の受講履歴や各事業部が扱うサービスの利用履歴を顧客ごとに把握しながら効果的な複合提案を行えるようになれば、収益拡大などの成果も見えてくるはずだ。

川村 氏は、「JMAMではデータ分析による数字にもとづいた意思決定を行う文化が着実に育まれています。JMASのサポートを得ながら第2フェーズに移行し、各事業部での幅広い用途に活用してもらえる仕組みを構築していきます」と話している。

<所属名・役職名は2017年3月時点>

株式会社日本能率協会マネジメントセンタ 通信教育事業本部 事業改革部長 加藤 由理 氏(左)
株式会社日本能率協会マネジメントセンター 通信教育事業本部 事業改革部 主幹 成井 隆 氏(右)

会社プロフィール

社名
株式会社日本能率協会マネジメントセンター
本社
東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー
URL
http://www.jmam.co.jp/

日本能率協会マネジメントセンターは、人の成長を後押しする事業を幅広く手掛ける。通信教育や集合研修などを軸とする人材育成支援事業、能率手帳のオリジナルブランド「NOLTY」や「PAGEM」を開発、販売する手帳・カレンダー事業、ビジネス書や資格関連書籍を扱う出版事業の3つがビジネスの柱だ。