株式会社スヴェンソン

オペレータの接客スキルを
形式知化・再利用するため、
AWS上にAI・機械学習サービスを用いた
データ分析基盤を構築
JMASとともに通話音声データの活用を進め、
応対品質とカスタマー・エクスペリエンスの
さらなる向上を目指す

目的

顧客とオペレータとの通話音声データをテキスト化・分析した結果をもとに効果的な施策を展開し、応対品質とカスタマー・エクスペリエンスのさらなる向上を実現したい

概要
  • 株式会社スヴェンソン(以下、スヴェンソン)のメンズ事業部ではコールセンター部隊(以下、サポートセンター)の接客スキルを形式知化、再利用するための施策として、Amazon Web Services(以下、AWS)上にAI・機械学習サービスを用いたデータ分析基盤を構築したいと考えていた
  • AWS上でのコンセプトの検証から実装までのプロセスを共同で進めるパートナーとしてJMASを選定した
  • Amazon Connectとシームレスに統合されたクラウドネイティブなデータ分析基盤をリリースした
  • JMASとともに本格的なデータ活用を進め、応対品質とカスタマー・エクスペリエンスのさらなる向上を実現しようとしている
課題
  • 顧客による問い合わせからヒアリング、課題合意、提案、成約に至るまでの一連の会話内容がブラックボックスで、商談の経緯を分析できなかった
選定理由
  • AWSから真っ先に指名される信用力とマネージドサービスを適切に扱える知見、技術力
  • AWS上でのPoCおよび開発の実績が豊富
  • プロジェクトを強力に牽引できるサポート体制
効果
  • Amazon Connectとシームレスに統合されたクラウドネイティブなデータ分析基盤を構築できた
  • DXのスタートラインに立つことができた

サポートセンターにおける
顧客応対の属人化を解消したい

メンズ事業部 マーケティングチーム兼
サポートセンター マネージャー 下田 暢浩氏

スヴェンソンはメンズ、レディスにおけるファッションウィッグ、医療用ウィッグ、およびヘアケア商品の製造・販売と、理美容サービスを手がける毛髪技術のパイオニア的存在だ。1984年の創業以来、「美と健康と環境の分野で社会に貢献する」という企業理念のもと、人々の頭髪に対する悩みにこたえ続けている。
メンズ事業部のサポートセンターには5人のオペレータが在席し、サービス利用に対する不明点、資料請求、実店舗の来店予約、アフターサービスなどの問い合わせに迅速に対応できる体制になっている。月間の入電数のうち約25%が新規の見込み顧客によるもので、オペレータには顧客のニーズを把握した上できめ細かな対応を行うことが求められる。

メンズ事業部 マーケティングチーム兼サポートセンター マネージャー 下田 暢浩氏は、「われわれが扱っている商材では単なる物売り営業をしていても成約率を高めることができません。お客様とじっくり付き合い、利用後の期待感と安心感を演出できる接客スキルが重要なカギを握ります。メンズ事業部のサポートセンターは弊社のウィッグ愛用者で構成され、彼らは頭髪に悩みを持つお客様に対して自身の体験談を交えながら最適な提案を行っています」と語る。

ただ、サポートセンターの現場ではオペレータ個人の経験や感覚でつかんだ接客スキルが暗黙知として埋もれ、顧客応対の属人化が問題になっていた。実際、顧客による問い合わせからヒアリング、課題合意、提案、成約に至るまでの一連の会話内容はブラックボックスであり、受注や失注に至った経緯などを詳細に分析・再利用することができなかったのだ。この状況は同社にとって大きな悩みの種だった。退職者や離職者が出ると応対品質を低下させてしまうリスクがあったためだ。

下田氏は、「オペレータの中には定年退職を間近に控えている方もいれば嘱託社員もいます。また、ウィッグ愛用者をオペレータとしてアサインし続ける運用も限界を迎えつつありました。そんな中、応対品質の平準化と底上げを図っていくためにはオペレータの接客スキルを形式知化し、再利用することが不可欠です。そこでわれわれは通話音声データをテキスト化・分析できる基盤の構築に向け、検討を始めました。まずはAWS上でのPoCとして取り組み、カスタマー・エクスペリエンスの向上に資する施策につなげられるかどうかを検証することにしたのです」と話す。


AWS上でのコンセプト検証から
実装までをJMASが強力に牽引

スヴェンソンはAWS上でのPoCプロジェクトを共同で実施してくれるパートナーの選定を行った。

下田氏は、「AWSにわれわれの意向を伝えたところ、真っ先に勧められたのがJMASです。実はJMASとは基幹系システムやPOSシステム関連の案件で以前から付き合いがあったため安堵したのを覚えています。ただ、当然ながら無条件に受け入れるわけにはいきません。AWSの知見、技術力、提案力、サポート体制などを考慮した公正な選考を経て、JMASと協力体制を組むことを決めました」と語る。

同社は2021年2月より、AWSのAI・機械学習サービスを用いたデータ分析基盤の技術検証をスタートした。ステップとしては通話音声データをテキストに変換するプロセスと精度の確認から開始。自然言語処理によるテキストのキーフレーズ抽出、感情分析、構文解析、エンティティ認識の精度も順次確認していき、コンセプトの実現可能性や効果を見極めていった。

下田氏は、「実は、PoCの過程で旧CTIシステムをAmazon Connectに置き換えるというイレギュラーなプロジェクトも走りましたが、JMASは柔軟に対応してくれました。プロジェクト管理と進行の手腕は見事の一言に尽きます。JMASがわれわれと密にコミュニケーションをとってくれたおかげで、PoCの各局面において目的やゴールを明確に定め、そのために必要な検証作業を決定・実行するプロセスを円滑に進めることができました。Amazon Connectに適応したコンセプトの設計、プロトタイプの作成、検証、再考、再検証のサイクルもうまく回してくれたことに感謝しています」と話す。


マネージドサービスを
フル活用したデータ分析基盤を構築

スヴェンソンは2022年4月、Amazon Connectと統合されたクラウドネイティブなデータ分析基盤を一次リリースした。今回構築した仕組みではAmazon Connectで記録された会話音声データがAmazon S3に格納されると、それをトリガーにLambda関数が起動し、Amazon Transcribe によるテキスト変換が実行される。その後、指定したテキストをAmazon Comprehendの自然言語処理にかけ、キーフレーズ抽出や感情分析などの結果をAmazon QuickSightで集計・可視化する。

プロジェクトは、本格的なデータ活用による価値創出という新しいフェーズに移行している。現在は、日々の業務を通じて質の高い分析対象データの蓄積を進めるとともに、データ活用のベストプラクティスを追及・実装している段階だ。

下田氏は、「新たにアサインされたオペレータに対して単にトークスクリプトを配布するだけの一方的な引き継ぎは往々にしてうまくいきません。データ分析の結果という客観的な根拠のもと、各オペレータが納得感と自信をもって応対できる体制を作っていきたいと考えています」と語る。

実際に取り組んでいるのが、年齢や性別、居住地などのデモグラフィックな情報と、自己実現やサービス選択における決め手などのサイコグラフィックな情報にもとづく5つの区分での顧客分類である。これにより、顧客セグメントごとに強調すべきフレーズや文脈を見つけ出し、経験の浅いオペレータも効果的な言い回しや表現を用いた提案ができるように支援する。また、各顧客セグメントに合わせたフォロー施策の展開、効果的なコール対象の割り出しなども行っていく。通話音声から顧客感情の機敏を察知し、適切なフォローをすることで応対品質の向上やトラブルの予防につなげていくことも検討中だ。

下田氏は、「DXのスタートラインに立てたのはJMASのサポートがあったからこそです。まだ道半ばであり、JMASにはカスタマー・エクスペリエンスのさらなる向上を実現する行程を伴走してもらいたいと考えています。AWSの絶え間ない進化に追従し、最適なクラウドアーキテクチャを適用していくためのお力添えもいただけると幸いです」と話す。


会社プロフィール

社名
株式会社スヴェンソン
本社
東京都港区赤坂1-12-32
URL
https://www.svenson.co.jp/

男性の自分磨きのサービスとしてヘアウィービングシステム(編み込み式増毛法)を活用した男性向けかつらの製造、販売、ヘアカット等の理美容サービス、ヘアケア商品の提供を主なサービスとする。メンズ直営店は全国に32店舗を展開。髪型を変えるように髪を増やす「増髪」が当たり前に受け入れられる世の中を目指している。