TOYO TIRE株式会社

AWS上にIoT・AI/ML基盤を構築し、
トラック・バス用タイヤの摩耗進行度を推定
運輸事業者の車両メンテナンス管理業務の合理化・効率化を支援する新ビジネスモデルを実現

目的

運輸事業者の車両メンテナンス管理業務の効率化と安全な車両運行管理を支援したい

概要
  • TOYO TIRE株式会社(以下、TOYO TIRE)は、タイヤの摩耗進行度をAI推定するモデルをベースにタイヤの状態管理PoCアプリを構築し、運輸事業者の車両メンテナンス管理業務の合理化・効率化を支援するビジネスモデルを具現化しようとしていた
  • 従来のタイヤの状態管理PoCアプリはブラックボックス化しており、開発の効率性や柔軟性を高めるための再構築の検討を開始した
  • Amazon Web Services(以下、AWS)上にIoTとAI/MLサービスを組み合わせたタイヤの状態管理アプリを再構築するプロジェクトを立ち上げ、開発パートナーとしてJMASを選定した
  • AWSをプラットフォームとする新たなタイヤの状態管理アプリ「Tire SAPRI」を稼働させ、テストマーケティングを実施している
課題
  • タイヤの状態管理アプリをAWSに最適化されたアーキテクチャで構成するためのノウハウ、リソースが不足していた
選定理由
  • AWS基盤の構築からアプリケーション開発までをワンストップで対応
  • AWSのIoTとAI/ML関連のマネージドサービスを扱えるノウハウと技術力を保有
  • AWSでの再構築プランを具体的にイメージさせてくれる提案力
効果
  • AWS上でタイヤの状態管理アプリ「Tire SAPRI」を稼働させ、新たなビジネスモデルを運用しているシステムのブラックボックス化を解消し、開発効率が高まった

運輸事業者向けの新ビジネスモデルを構築したい

中央研究所 第二研究部長 山下 兼一 氏

TOYO TIREは、自動車タイヤ、および自動車用部品の開発・製造・販売を手がける。乗用車用タイヤ、SUV/ピックアップトラックなどライトトラック用タイヤ、トラック・バス用タイヤなど自動車タイヤの製造・販売を事業の柱とし、日本だけでなく、北米、欧州、中国、東南アジアなどにもタイヤ供給網を構築。同社が展開する「TOYO TIRES」「NITTO」の両ブランドは世界中で広く愛用されている。

TOYO TIRE 中央研究所 第二研究部長 山下 兼一氏は、「国内の物流業界では宅配需要が急増している一方で、ドライバー不足と労働時間の上限規制による供給のミスマッチが問題になっています。その中で、運輸事業者は保有車両の厳格なメンテナンス管理と、安全かつ遅滞なく輸送するための車両運行管理に人員や時間、資金などのリソースを過不足なく投入する必要に迫られています。われわれとしては運輸事業者が保有する車両のメンテナンス管理という側面から、業務効率化とさらなる安全性の向上を支援するアプローチについて可能性を追求しています」と語る。

実際、TOYO TIREでは2020年に、トラックやバスなどの車両のホイールに装着したセンサーによって自動収集された空気圧や内部温度といったタイヤの状態データや、GPSによって得られる位置情報、加速度情報などをリアルタイムでクラウドに蓄積し、AIによってタイヤの摩耗進行度を推定するモデルを開発。それをベースにタイヤの状態管理PoCアプリを構築し、タイヤに関連する管理項目の入力や情報共有が可能なアプリケーションを介して運輸事業者の車両メンテナンス管理業務の合理化・効率化を支援するビジネスモデルを具現化しようとしてきた。

同システムは特定のベンダーに依存しない柔軟なシステム設計を目指すことにした。これにより、仕様どおりに機能が実装されているかどうか、開発委託先の提案内容の有効性やコストの妥当性をしっかりと確認し、より効率的で信頼性の高いシステム運用を実現できると考えたのだ。

中央研究所 第二研究部 情報解析グループ 井関 清治氏は、「当時は大まかなアイデアやコンセプトを検証するPoCの初期段階にありました。それからビジネスモデルの実現性を検証するPoB・商用化に向けて順次機能を追加していくフェーズに入りますが、ブラックボックス化が原因で内製での改修もままならず、開発スピードが上がらない状況だったのです。こうした課題を解決するべく、われわれはAWS上にタイヤの状態管理アプリを再構築するプロジェクトを立ち上げました」と話す。


IoT・AI/MLのノウハウと技術力に
定評のあるJMASを選定

TOYO TIREでは、従来のタイヤの状態管理PoCアプリをAWSに最適化されたアーキテクチャで構成するためのノウハウと技術力、リソースを外部から調達する必要があり、システムベンダーの調査を行った。そこで重要な要件となったのが、IoT・AI/ML関連のサービスを組み合わせたAWS基盤の構築からフロントエンドを担うアプリケーション開発までをシングルベンダー体制で遂行できることだ。これは開発プロセス全体のスピードと柔軟性を確保するためである。ただ、要件を満たすベンダーがなかなか見つからなかった。そんな中、AWSのパートナープログラムを介して出会ったのがJMASだ。

中央研究所 第二研究部 情報解析グループ 土本 壮至氏は、「AWSでの再構築にあたってはシステムの内部構造や動作原理の不透明な部分を解明するとともに、われわれが作り上げたいビジネスモデルに必要な構成要素を理解して具体的なプランに落とし込まなければなりません。JMASがそのノウハウと技術力を有する数少ないベンダーであることは具体的かつ的確な提案内容を見れば明らかでした。実績も豊富で、まさにわれわれが求めるパートナー像と合致したのです」と語る。

新ビジネスモデルを支えるAWS基盤の構築にあたっては課題と目標を明確にした上でビジネス要件を洗い出し、関係部署と合意形成を図るプロセスをJMASと実施。それをもとにシステム要件を定義し、Amazon SageMakerを活用してIoT・AI/MLの実行環境を構築した。また、アプリケーション開発ではJMASグループの一員としてUI/UX設計を中心に手がける株式会社アツラエも参画。ユーザの要望を取り入れながら視認性と操作性に優れたUI/UXを実装した。

井関氏は、「実装後テストではJMASとともに網羅性の高いテストケースを作成し、システムのすべての機能と非機能要件が想定どおりに動作することを確認しました。バグの早期発見と修正により手戻りを最小限に抑えながら開発できたのはJMASのおかげです。システムの中身をできる限りクリアにし、仕様変更や機能追加などに納得感をもって取り組める体制も整備できて満足しています」と話す。

中央研究所 第二研究部 情報解析グループ 井関 清治 氏(左)
中央研究所 第二研究部 情報解析グループ 土本 壮至 氏(右)

AWSに最適化された
タイヤの状態管理アプリを構築

TOYO TIREは2024年12月、AWSをプラットフォームとする新たなタイヤの状態管理アプリ「Tire SAPRI」を稼働させた。これは、トラックやバスなどの大型車両に装着されたタイヤの状態データを自動収集・蓄積・可視化する仕組みだ。さらに、蓄積されたデータは、タイヤの装着実績や過去のメンテナンス実績などと統合され、現在および将来のタイヤの摩耗状態をAIで推定することもできる。現在は、テストマーケティングとして数社の運輸事業者を対象にTire SAPRIアプリケーションを展開している。

JMASと実装した機能は、「摩耗予測表示機能」「空気圧、温度モニタリング機能」「状態異常検知・通知機能」「タイヤの管理機能」の大きく4つだ。摩耗予測表示機能は、現在のタイヤ摩耗状態だけでなく、将来にわたる残り溝の予測結果をタイヤごとに表示し、交換やローテーションの管理・計画立案に活用できる。道路運送車両の保安基準を満たさない恐れがあるタイヤは色付け表示され、交換対象をひと目で把握可能だ。空気圧、温度モニタリング機能は、タイヤの空気圧・温度をリアルタイム表示し、基準値を外れたタイヤを色付けすることで異常を認識できるもの。状態異常検知・通知機能は、走行中に空気圧の低下や発熱などの異常が起こった際に運輸事業者とTOYO TIREにアラートメールを送信し、事故の未然防止と適正運行につなげる。そしてタイヤの管理機能は、装着中のタイヤだけでなく保管中のタイヤの状態も一元管理し、効率的なメンテナンス業務に役立てられる。

山下氏は、「Tire SAPRIについては正式リリースに向けて技術課題のつぶし込みと機能改善を順次行い、運輸事業者の車両メンテナンス管理業務の効率化と安全な車両運行管理を支援するソリューションとしての完成度を高めているところです。その中で単なるシステム開発にとどまらず、ITコンサルタントの立ち位置でもプロジェクトに携わるJMASの存在感は日に日に大きくなっています。ロジスティクス領域でタイヤメーカーならではの新しい価値を提供し続けていくために、引き続きサポートしていただきたいと考えています」と話した。


会社プロフィール

社名
TOYO TIRE株式会社
本社
兵庫県伊丹市藤ノ木2丁目2番13号
URL
https://www.toyotires.co.jp/

TOYO TIREは、自動車タイヤ、および自動車用部品の開発・製造・販売を手がける。乗用車用タイヤ、SUV/ピックアップトラックなどライトトラック用タイヤ、トラック・バス用タイヤなど自動車タイヤの製造・販売を事業の柱とし、日本だけでなく、北米、欧州、中国、東南アジアなどにもタイヤ供給網を構築。同社が展開する「TOYO TIRES」「NITTO」の両ブランドは世界中で広く愛用されている。