株式会社日本能率協会コンサルティング

生成AIを武器に
コンサルティングの未来を切り開く
~生成AIを活用した技術棚卸と社内文書検索の
2つのユースケースを実運用フェーズへ~

目的

生成AIの有用なユースケースを実運用フェーズに乗せ、コンサルティング業務のさらなる付加価値向上を図る

概要
  • 株式会社日本能率協会コンサルティング(以下、JMAC)のR&Dコンサルティング事業本部は、コンサルティング業務の効率化を図るべく、Azure OpenAI Service(以下、Azure OpenAI)を活用したChatGPTの検証に乗り出した
  • 生成AIのPoC実績と専任コンサルタントによる伴走型サポート体制を有するJMASをパートナーに指名した
  • 技術の棚卸業務の効率化と、社内文書検索の高速化という2つのテーマについてPoCを実施した
  • 生成AIの2つのユースケースについて実現可能性と有用性を確認し、本番運用への取り組みを開始した
課題
  • 従来は特許や学術論文、各種報告書などの膨大な文書から必要情報(要素技術と機能など)を一覧化する作業に多くの時間を費やしていた
  • コンサルティング関連のノウハウやナレッジ文書から当該プロジェクトに必要な関連文書を探すために時間を要していた
  • Azure OpenAI を活用したChatGPTの検証環境の構築からPoC実施、有用性評価までの一連のプロセスを自社で円滑に遂行するためのノウハウと知見を得たかった
選定理由
  • Azure OpenAI を活用したChatGPTの検証、およびアジャイル型開発の実績
  • 生成AIと技術要素などの現場業務を橋渡しできるコンサルタントが伴走支援するサポート体制
  • 生成AIの検証から評価、実装、運用までをトータルに支援可能
効果
  • 生成AIを活用した技術棚卸と社内文書検索の実運用化に目途が立った
  • 生成AI活用のスキルとノウハウを蓄積できた

コンサルティング業務での
生成AIの適用可能性を探りたい

執行役員
R&Dコンサルティング事業本部 本部長
シニア・コンサルタント 近藤 晋 氏

JMACは社団法人日本能率協会の中核として設立され、80年以上の歴史を誇る日系コンサルティングファームだ。自動車や化学製品、アパレル、食品、医薬品などの製造業を軸に、サービス業や農業などの幅広い分野のコンサルティングを手がけている。

機能別のコンサルティンググループの中で、企業の研究開発部門を対象としたサービスを担うのがR&Dコンサルティング事業本部である。執行役員 R&Dコンサルティング事業本部 本部長 シニア・コンサルタント 近藤 晋氏は、「当本部に所属する技術・開発戦略ユニットは、中長期的な技術戦略の策定と高収益事業の創出などにより、企業成長を支援することがミッションです。その前段階では、クライアント企業がもつ技術やノウハウを体系的に整理・可視化し、強みや弱み、将来的なビジネスへの活用可能性などを分析・検討する為の技術棚卸業務と、市場トレンドや技術・業界動向などにかかる膨大な情報を読み込んで分析・解釈する調査業務が欠かせません。そして、ここで調査・分析した要素技術と社会課題や市場ニーズとの関係性を明らかにし、クライアント企業を成長に導く技術戦略に落とし込んでいく局面がコンサルタントの腕の見せ所です」と語る。

具体的には、特許や学術論文、各種報告書などの膨大な文書から要素技術と機能などを抽出・一覧化するプロセスの改善だ。そこで注目したのが生成AIである。膨大な文書から要素技術と機能等を構造的に可視化する作業の大部分を生成AIに担わせることができないかと考えたのだ。

近藤氏は、「これまでコンサルタントが担ってきた技術の棚卸業務の大部分を生成AIに置き換えることについてはコンサルティングビジネス上のカニバリゼーションのリスクもあります。ただ、世の中の生成AI活用の波に乗り遅れるわけにはいきません。比較的定型的に処理できるプロセスを生成AIに回してもらい、より深い思考や知識、洞察力を要する非定型的な業務プロセスに人的リソースを集中的に投下できるビジネスモデルへの転換が必要と判断しました」と話す。

また同部は、コンサルティング関連の数十年にわたるノウハウやナレッジを文書の形式で蓄積している。それらの文書にタグ付けして整理してきたものの、その種類や数は膨大で目当ての文書を探し当てるのに相当の時間を要していたという。

R&Dコンサルティング事業本部 技術・開発戦略ユニット 副ユニット長 チーフ・コンサルタント 山中 淳一氏は、「中堅からベテランのコンサルタントであれば必要な文書を探し当てるコツを得ていますが、若手は違います。この環境では知的好奇心の赴くままに必要な文書を見つけ、重要な示唆を得るということがなかなかかなわず、彼らの成長意欲を削いでしまうことになりかねません。そこで、生成AIベースの社内文書検索システムを構築し、だれもが簡単に必要な文書を探し当て、知識をインプットし発想の幅を広げられるようにしたかったのです」と語る。


生成AIの検証とアジャイル型開発の実績を評価

R&Dコンサルティング事業本部
技術・開発戦略ユニット 副ユニット長
チーフ・コンサルタント 山中 淳一 氏

R&Dコンサルティング事業本部は、Azure OpenAI を活用したChatGPTの検証に乗り出すことを決めた。

近藤氏は、「OpenAIのChatGPTについては社内許可を得た上での利用が認められてきました。ただ、厳格な機密管理が前提となるビジネスの特性上、業務に関連する情報を不用意に与えることはできません。オプトアウト申請後も情報漏えいの不安は拭えず、業務上での利用は限定的になっていました。今回、セキュリティが盤石なAzure上でChatGPTを試したいと考えたのです」と語る。

ただ生成AIの検証には技術的なハードルが伴い、それを効率的に行うための知見やアイデアも取り入れる必要があった。そこで声をかけたのが生成AIのPoC支援に定評のあるJMASだ。

近藤氏は、「今回のプロジェクトでは、われわれ自身も手探り状態でコンセプトの意図をくみ取り、PoCを行いながら、有用性が認められたものを実運用フェーズに乗せていくことを求められました。このプロセスは細かな軌道修正に柔軟に対応できるアジャイル型のベンダーでなければうまくリードできません。検証から評価、実装、運用までをトータルに支援できること、われわれの現場業務への理解度も考慮するとJMASが適任でした」と話す。

2024年2月、Azure 上でChatGPTなどの言語モデルを利用できる検証環境を構築。膨大な文書から要素技術と機能などを抽出・一覧化できるかどうか、だれもが迅速かつ容易に必要な文書を探し当てられる社内文書検索システムを実現できるかどうかの2つのテーマについて検証した。

R&Dコンサルティング事業本部 技術・開発戦略ユニット スタートアップ支援室 ディレクタ― チーフ・コンサルタント 小高 大祐氏は、「JMASのコンサルタントによる伴走支援のおかげで、関係部門とのスケジュール調整やタスク管理なども含めた検証プロセスを円滑に遂行できました。検証環境のWeb UIは直感的で使いやすく、コンサルタントから的確な助言をもらいながら『より厳密に』『より創造的に』『よりバランスよく』など、われわれが求める回答スタイルに合わせて生成AIのパラメータをチューニングできたのも貴重な経験です。技術棚卸の検証ではより正確な回答を得るための試行錯誤を経て、効果的なプロンプト設計についても学ぶことができました」と語る。


技術棚卸業務の効率化と
社内文書検索の高速化を実現

R&Dコンサルティング事業本部
技術・開発戦略ユニット
スタートアップ支援室 ディレクタ―
チーフ・コンサルタント 小高 大祐 氏

R&Dコンサルティング本部は、2つのテーマについて検証を終えたところだ。1つ目の技術棚卸業務での生成AIの活用については、これまでコンサルタントが手作業で作成していたのと同等レベルの技術棚卸表を出力できるところまできており、今後の定常運用に目途が立ったという。

近藤氏は、「技術棚卸表には一部誤った情報が含まれることもありますが、コンサルタントの目視チェックによってミスを補える範囲内に収まっています。それを差し引いても余りあるメリットがスピードです。要素技術や機能を抽出・一覧化するプロセスが劇的に効率化するため、極めて有用です。今後は、各要素技術とマーケット側の情報との関係性を明示するような機能を追加する計画です」と語る。

2つ目のテーマである生成AIベースの社内文書検索も有用性が認められた。若手コンサルタントの質問の意図を概ね正しく読み取り、高精度な回答を得られたり、中堅のコンサルタントが顧客の課題にどの観点で解決策を提案すべきか質問した場合も適切な回答を得られるレベルに達している。回答の根拠となる参照元のリンクを提示してくれるため、回答内容の正誤を速やかにチェックすることも可能だ。

コンサルティング関連文書を生成AIの学習に適した形式に整形し、回答精度をさらに高めていくのが今後のテーマである。画像付き資料やスライドなど、テキストとしてエンベディング(AIが扱いやすいように、データを変換する技術)できないデータもうまく解釈・回答できるようになれば理想だ。さらに、社内文書検索のユースケースを他のコンサルティンググループにも順次展開していく。

近藤氏は、「これからもコンサルティング業務の付加価値をさらに高めるための武器として、生成AIの検証と改善を続けていく方針です。JMASには生成AIの飛躍的な進化に追従するために必要な情報提供と技術支援を継続していただき、われわれのビジネスの成長を後押ししてほしいと考えています」と話した。


会社プロフィール

社名
株式会社日本能率協会コンサルティング
本社
東京都港区芝公園3-1-22 日本能率協会ビル7階
URL
https://www.jmac.co.jp/

JMACは社団法人日本能率協会の中核として設立され、80年以上の歴史を誇る日系コンサルティングファームだ。自動車や化学製品、アパレル、食品、医薬品などの製造業を軸に、サービス業や農業などの幅広い分野のコンサルティングを手がけている。