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- 株式会社奥村組
AWS上にAI/ML基盤を構築し、
山岳トンネル工事の発破掘削で装薬孔ごとに
適正な装薬量を算出可能に
JMASのAWS・AIエンジニアの
伴走支援により、熟練技能のデジタル化と
現場DXを推進

目的
山岳トンネル工事の発破掘削において、岩盤特性や切羽(掘削の最前面)の状況に応じて適正な装薬量(爆薬の量)をAI/MLで推論できるようにし、作業の省力化と技能伝承を実現したい
- 概要
- 株式会社奥村組(以下、奥村組)は、山岳トンネル工事分野において熟練技能者の経験やノウハウに基づく判断ロジックをモデル化し、発破掘削作業の標準化と効率化、安全性と出来形(施工後の仕上がり)品質の向上を実現する可能性について検証した
- Amazon Web Services(以下、AWS)上にAI/ML基盤を軸とする装薬量推論システムを構築するプロジェクトを立ち上げた
- 検証済みAIモデルのAWS環境での適用と推論結果を出力・可視化するフロントエンド開発の委託先にJMASを選んだ
- 熟練技能の継承と発破掘削の出来形品質の安定化を実現するための土台ができた
- 課題
- AI/ML 基盤を軸とする装薬量推論システムをAWSに最適化されたアーキテクチャで構成するためのノウハウと技術力、リソースが不足していた
- 選定理由
- AWS Partner Network(APN)コンサルティングパートナーとしての実績
- クラウド・AIモデル作成の専門家が伴走支援するサポート体制
- マルチベンダー体制でのプロジェクトの全体統括が可能
- 効果
- スケーラビリティと運用効率を両立させたAI/ML基盤、および装薬量推論システムを構築し、高精度な推論結果を得られるようになった
- 山岳トンネル工事分野において熟練技能のデジタル化と現場DXを推進する体制が整った
熟練技能者の経験やノウハウをAI/MLで代替したい

浜田 元 氏
奥村組は関西を地盤として土木事業・建築事業・不動産事業等を展開する総合建設会社だ。建築事業分野では、国内初の実用免震ビルを建設するなど「免震のパイオニア」として知られる。土木事業分野では、山岳トンネルやシールド工法などの施工技術に強みを持ち、安全で強靭な社会基盤の構築において実績を積み重ねている。
同社が社会の持続的発展と建設業の課題解決に向けた技術開発の中核拠点に位置付けているのが茨城県つくば市にある技術研究所だ。その中で主に山岳トンネルやシールド工法などのインフラ技術の高度化と生産性向上に向けた土木技術の研究開発を行うのが土木研究グループである。
同社 技術本部 技術研究所 土木研究グループ 浜田 元氏は、「山岳トンネル工事での掘削では岩盤に穴を開け、爆薬を装填して発破を行う工法が主流です。掘削にあたっては熟練の技能者が掘削面の岩盤の硬さや強度、割れ目などを目視や岩検ハンマーによって確認し、装薬孔(爆薬を入れる穴)の穿孔配置(岩盤に穴を開ける位置)と装薬量を計画・実行するのが通例で、発破掘削の出来形は技能者の経験や感覚に依存しがちです。この状況は技能者の高齢化・人材不足と現場の生産性・安全性向上の要請という現代的背景から望ましくありません」と語る。
昨今の山岳トンネル工事分野では熟練技能の継承を補い、省力化と施工精度の向上を実現するICT施工技術の導入が進められている。その代表格がコンピュータジャンボだ。これは、山岳トンネル工事の岩盤削孔や発破作業をコンピュータ制御で自動化・高精度化し、正確な掘削と、孔情報や位置座標、削孔速度、打撃圧、フィード圧、回転圧などの削孔データの収集を可能にする大型重機である。
浜田氏は、「コンピュータジャンボの自社機の導入が決まったタイミングで、われわれとしては熟練技能者の暗黙知となっている判断ロジックを形式知化し、作業の標準化と効率化、安全性と出来形品質の向上を実現する可能性について検証する方針を定めました。コンピュータジャンボなどから得られる削孔情報や、装薬量、レーザースキャナーで計測した出来形、技能者の暗黙知や操作履歴などの各種データをAI/ML基盤に統合し、岩盤特性や切羽の状況に応じて適正な装薬量を推論するシステムの開発を目指すことにしたのです」と話す。
JMASがAWSに最適化されたアーキテクチャを実装
今回のプロジェクトは、AIモデルの精度・妥当性の検証・評価と、AI/ML基盤を軸とした装薬量推論システムの構築を分離し、マルチベンダーによる協働体制で実行するアプローチが既定路線だった。この中でJMASが担った領域は、検証済みAIモデルのAWS環境での適用と推論結果を出力・可視化するフロントエンド開発である。
浜田氏は、「AWSの深い知見と高い技術力を有するエンジニアが多数在籍し、AWS Partner Network(APN)コンサルティングパートナーとして実績を重ねるJMASに支援を要請しました。実はJMASとはかねてより別案件でご縁があり、その実績を評価してお声がけしたのが正直なところです。われわれの課題に即した提案力は見事でしたし、クラウド・AIモデル作成の専門家が伴走支援するサポート体制も心強かったですね」と語る。
マルチベンダー体制でのプロジェクトの全体統括を担ったのはJMASだ。奥村組を含む3社がリモートで協働する中で、責任分界点の明確化とガバナンスの強化、業界特有用語の定義と認識のすり合わせ、スケジュール調整、タスク管理・レビューなどを確実に遂行することでプロジェクトを滞りなく進行させた。
検証済みAIモデルのAI/ML基盤への適用においてはAmazon SageMaker AIでモデルのホスティングと推論エンドポイントを構築し、AWS Lambdaにデータの前処理やトリガー制御を担わせる構成を採用。削孔データなどの新たな推論対象データをフロントエンド画面から手動でAmazon S3にアップロードすることで、「外周孔(断面の最外周に沿ってあけられる削孔)」「外周孔以外」の2つのAIモデルによる推論結果を返すデータパイプラインを構築した。
浜田氏は、「データ収集・蓄積・準備からモデル学習、推論、運用に至るまで、AWSの各種サービスを適切に組み合わせることで、スケーラビリティと運用効率を両立させたAI/ML基盤、および装薬量推論システムを構築できたのは大きな成果です。フロントエンド開発についても現場ユーザが直感的に目的のアクションへ到達し、推論結果を分かりやすく可視化するUI/UXを実装できました」と話す。

全断面の装薬量推論結果をもとに
最適な発破パターンを計画
奥村組ではAWS上でのAI/ML基盤の構築により、暗黙知である装薬量の判断ロジックを形式知化することに成功。これにより、熟練技能の継承と発破掘削の出来形品質の安定化を実現するための土台ができた。
具体的な仕組みとしては、コンピュータジャンボから取得できる削孔データを専用PCに転送・編集してAWSにアップロードすると、過去の施工データなどを学習したAIモデルが起爆の時間差を考慮しながら装薬孔ごとの装薬量計画値を算出し、図表で表示・出力する。削孔データをもとに推論入力データを作成し、それらをAWSにアップロードしてから全断面での推論結果を表示するまでに要する時間は5分~10分である。現場の技能者はタブレット端末などを介して推論結果を確認し、発破パターンの計画立案に生かすことが可能だ。
現場検証の結果も上々である。四国地方整備局より発注された見付トンネル工事では、外周装薬孔を対象に装薬量推論システムが算出した計画値と熟練技能者の実績値を比較。結果、設計断面に近い掘削量となった発破掘削の断面において装薬孔あたりの計画値が340~390g、実績値が400gとなりおおよそ整合することを確認した。
奥村組ではAI/ML基盤を軸に、熟練技能のデジタル化と現場DXを推し進めていく。まずは、山岳トンネル工事への装薬量推論技術の適用機会を増やし、施工現場で得られる新たな削孔データや出来形データなどをもとにAIモデルを再検証・更新することで推論精度をさらに高めていく計画だ。
浜田氏は、「装薬孔の穿孔配置を計画するシステムの開発にも取り組んでいきます。それを装薬量計画システムと統合することで、あらゆる岩盤性状に対して最適な孔数・削孔位置・装薬量を自動で導き出す発破パターン計画システムへ発展させることが目標です。そのためにはJMASの知見と技術的支援が欠かせません。AWS環境における運用・保守性、セキュリティなどの非機能要件の強化においても引き続きお力添えいただきたいと考えています」と話した。

会社プロフィール

- 社名
- 株式会社奥村組
- 本社
- 大阪市阿倍野区松崎町二丁目2番2号
- URL
- https://www.okumuragumi.co.jp/
奥村組は関西を地盤として土木事業・建築事業・不動産事業等を展開する総合建設会社。建築事業分野では、国内初の実用免震ビルを建設するなど「免震のパイオニア」として知られる。土木事業分野では、山岳トンネルやシールド工法などの施工技術に強みを持ち、安全で強靭な社会基盤の構築において実績を積み重ねている。



























