ヤンマーキャステクノ株式会社

工場内のフォークリフトの稼働実態を
Beaconで可視化
最適な運搬方法を考察し、
スマートファクトリー化を推進

目的

スマートファクトリー化に向けた取り組みの一環として、14台のフォークリフトの稼働実態を可視化し、運用効率を改善するための施策を検討する

概要
  • ヤンマーキャステクノ株式会社(以下、ヤンマーキャステクノ)は、スマートファクトリー化に向けた取り組みの一環として、14台のフォークリフトの稼働実態を可視化するプロジェクトを発足した
  • Beaconを活用したフォークリフトの動線解析に実績のあるJMASに、現地調査からBeacon検知アプリの開発、Beaconの取り付け作業、データ収集、分析、レポート作成、コンサルティングまでに至る支援を依頼した
  • 1か月間にわたる計測の結果、同社はフォークリフトの運用効率を改善する施策の検討に役立つさまざまな洞察を得た
選定理由
  • Beaconを活用したフォークリフトの動線解析に実績がある
  • 現地調査からBeacon検知アプリの開発、Beaconの取り付け作業、データ収集、分析、レポート作成、コンサルティングまでをトータルに支援してくれる
  • Beaconを活用した実証実験を低コストに実施できる
成果
  • フォークリフトの運用効率を改善するためのさまざまな洞察を獲得できた
  • Beaconを活用した実証実験を通じてIoTの技術と現場改善のノウハウを蓄積できた

フォークリフトの稼働実績データの収集は困難

ヤンマーキャステクノは、舶用・陸用ディーゼルエンジンの主要部品や、産業用機械部品の鋳造、鋳物部品の加工を一貫して行う部品メーカーだ。ヤンマーグループの一員として、人々の豊かな暮らしの実現と地球環境にやさしいものづくりを目指している。

取締役 松江事業部 技術部 部長 荻野 知也氏は、「インダストリー4.0にもとづく次世代のものづくりが注目される中、われわれはスマートファクトリー化に向けた取り組みを始めています。ただ、IoTの知見なくして高品質な分析対象データを集めるのは困難です。データ収集・分析の結果をもとに改善施策を立案、実施し、効果を検証するサイクルを構築することも課題でした。まずはIoTの技術と現場改善のノウハウの習得が求められたのです」と語る。

同社は、敷地内における3つの工場間の製品運搬に使用する14台のフォークリフトを見える化の対象に定めた。フォークリフトには、燃料や法定点検などのコストの削減、生産性の向上を実現するための運用上の改善点が多いとにらんでいたためだ。

松江事業部 技術部 生産技術グループ 課長 大森 照晃氏は、「以前、フォークリフトの稼働実態を人海戦術による定点観測や後追い観察で明らかにしようとしましたが、断念してしまった経緯があります。広大な敷地内をランダムに走り回るフォークリフトの移動距離や時間、動線などの稼働実績データを目視や手書きで集めるのは人手や時間などの制約もあり限界がありました。結局、見える化までには至らず、改善施策につなげることもできなかったのです」と話す。

ヤンマーキャステクノ株式会社 取締役 松江事業部 技術部 部長 荻野 知也 氏(左)
ヤンマーキャステクノ株式会社 松江事業部 技術部 生産技術グループ 課長 大森 照晃 氏(右)

Beaconによるデータ収集、分析、
コンサルティングを支援

ヤンマーキャステクノは、フォークリフトの稼働実態の可視化を支援してくれるパートナーの選定を開始。ヤンマー中央研究所の紹介で知ったJMASを評価してみることにした。

松江事業部 技術部 生産技術グループ 伊藤 雅広氏は、「JMASは70年以上の歴史を持つ日本能率協会を母体とし、Beaconを活用したフォークリフトの動線解析に実績があります。現地調査からBeacon検知アプリの開発、Beaconの取り付け作業、データ収集、分析、レポート作成、コンサルティングまでをトータルに支援できる体制も評価してJMASを選定しました。特別な準備をすることなく、低コストに試行できることも決め手でした」と語る。

JMASは、Beacappを用いて低コストかつ短期間にBeaconを活用できる環境を整えた。Beacappは、クラウドベースのBeacon運用管理プラットフォームだ。

計測にあたっては、屋内の積み下ろしや運び込み場所、移動経路の要所などの49カ所にBeacon端末を設置。Beacon端末が発する信号を各フォークリフトに搭載したiPodで常時検知し、計測データをAWS(Amazon Web Service)に自動アップロードする仕組みを構築した。また、稼働/停止状況や積荷の有無、利用部門のデータについても、運転者にiPodアプリへ手入力してもらうことで収集できるようにした。

同社は、各フォークリフトの稼働実態を把握するための計測を1か月間にわたって実施した。大森氏は、「Beacon端末から発せられる信号の受信強度によってフォークリフトの位置を計測し、時系列にたどることで移動軌跡を導出します。各フォークリフトの動きを網羅的につかめるよう仮計測を実施し、Beacon端末の設置場所や間隔についてJMASから的確な助言をいただきました。一連のサービスを短期間に提供し、アプリの機能追加といった突発的な要望にもすばやくこたえてくれたことが印象的です」と語る。

※画像はイメージです。実際の利用シーンとは異なります。

フォークリフトの運用効率改善に
役立つ洞察を獲得

ヤンマーキャステクノ株式会社 松江事業部
松江事業部 技術部 生産技術グループ
伊藤 雅広 氏

今回の計測により見えたのは、14台のフォークリフトの平均稼働率が30%、平均積載率が66.1%にとどまったという事実だ。たとえば、1日を通じてほとんど稼働していない車両が複数台あり、積荷なしの稼働時間が総稼働時間の78%を占める車両や、複数部門で兼用しているために頻繁に利用待ち時間が発生している車両も明らかになったという。

また、各フォークリフトの動線や走行頻度を工場内の見取り図にヒートマップで表示・可視化できたことで課題も見えてきた。たとえば、走行ルートに重複の多い車両はいずれも稼働率が低く、車両の配置位置や利用ルールなどに改善の余地がある。伊藤氏は、「JMASに作成していただいたレポートには実績データや運用上の問題点がわかりやすく記されており、フォークリフトの運用効率を改善する施策の検討に役立つさまざまな洞察を得ることができました」と話す。

同社は、各フォークリフトの実績データから車両を3台削減しても通常の運搬作業を滞りなく行えるのではないか、という仮説を導いた。そこでJMASとともに11台の車両の利用範囲を定め、稼働率の低い車両に運搬作業を割り振った上で仮説を検証する実証実験を行った。

大森氏は、「フォークリフトを3台減らしても通常の運搬作業に支障はなく、削減時の平均稼働率は16%上昇し、平均積載率も2%向上しました。車両配置の見直しや運行時間のルール化、車両位置の可視化、予約機能の実装など、今後、車両台数を減らしていく上で取り組むべきミッションが明確になったのは大きな収穫でした」と語る。

ヤンマーキャステクノでは、作業工程の進捗状況に応じて運転資格を持つ不特定の作業者がフォークリフトを交互に運転する体制をとっている。2回目の計測の結果、稼働率の改善施策として運転者の専従化が有効という数値的根拠も得ることができたという。IoTの技術と現場改善のノウハウを蓄積できたのも成果だ。

荻野氏は、「Beaconを利用すれば、それほど時間やコストをかけずに工場内のものの流れや人の動きの情報を収集できることがわかりました。今後は、多台待ち工程での作業者の移動や作業順序の最適化、出荷前製品の品質自動判定、設備の稼働監視・プロアクティブな保全活動を実現すべく各種センサー情報を収集、分析する計画です。ITとコンサルティングの両面でJMASの支援を得ながらスマートファクトリー化を推進していきます」と話した。


会社プロフィール

社名
ヤンマーキャステクノ株式会社
本社
島根県松江市八幡町960番地
URL
https://www.yanmar.com/jp/ycat/

ヤンマーキャステクノは、舶用・陸用ディーゼルエンジンの主要部品や、産業用機械部品の鋳造、鋳物部品の加工を一貫して行う部品メーカー。ヤンマーグループの一員として、人々の豊かな暮らしの実現と地球環境にやさしいものづくりを目指している。